【事業用と住居の賃料を経費にできる?】計上方法など詳しく解説
事業用に借りている事務所の賃料や自宅で事業として使っているお部屋の家賃、経費にできる?
事業を行う場合の事務所の賃貸料や、自宅の一部を事務所として使っている場合の家賃や駐車場代等は、経費として計上が可能です。
むしろ経費として計上することで節税につながるので忘れずに計上しましょう。
ただし、家賃と言っても自宅兼事務所なのか、1軒丸ごと事務所として使用しているのか、コワーキングスペースを契約しているのかなどによって、計上する費目が違います。
今回は家賃などの費用がどこまで計上可能かという話と、具体的な経理処理の際に使用する勘定科目についても解説します。
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テナント情報に詳しいプロのポイント
賃貸専門家:古川 真史
資 格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
奈良在住25年以上。宅地建物取引士・賃貸経営管理士の資格保有。ルームアドバイザーとしてのキャリア18年以上の大ベテラン。不動産賃貸の関連はすべて媒介経験あり。奈良出身ではないのに奈良まほろばソムリエ検定(奈良通1級)取得する奈良への溺愛っぷり。奈良マニアの古川より独自な目線で賃貸情報を多数お届けします。
賃貸事務所・テナントの賃料は「地代家賃」
事務所として物件を借りている場合、その家賃・賃料は経費の扱いとなります。
家賃を経費として計上する場合は「地代家賃」と言う品目で計上し、確定申告の際は青色申告決算書、または収支内訳書の「地代家賃」欄に計上する金額を記入します。
「地代家賃」として申告できる費用は、事務所の賃料や事業で使用している駐車場代、レンタルオフィス代等となります。
そのため、基本「借りている物件」が対象となり、持ち家は対象外です。
自宅兼事務所は「家事按分」して計上する
自宅兼事務所の場合は、家賃の一部を「地代家賃」として計上できます。
プライベートで使用している部分まで経費として計上することはできません。
では、兼用として使用している場合はどうやって事業用とプライベート用を分ければいいのか? 個人事業主が支出した費用を、プライベートで使用した部分と事業として使用した部分とで分けることを「家事按分」といいます。
「家事按分」は確定申告ではあらゆる費目で登場します。
家賃のほか光熱費や通信費、ガソリン代などで使われることが多いでしょうか。
ここでは家賃がテーマなので、家賃の家事按分について解説します。
家賃の家事按分の方法
家事按分はプライベートの費用と事業費用が混在している費用をルールに基づいて計算し、事業に使用した分だけ算出します。
では、プライベート部分と事業部分を分けるにはどのような根拠を用いたらいいのか? 家賃の家事按分として使用される方法には「面積」に基づいて割合を決める方法と、「使用時間」に基づいて割合を決める方法があります。
面積に基づいて割合を決める方法
まずは「賃貸物件のうち、どのくらいの面積を事業に使用しているのか」を計算してみましょう。
例えば、自宅の面積が約80平方メートルで、事務所として使用しているスペースが20平方メートルの場合、家賃のうち25%を事業費として計上するのが妥当でしょう。
使用時間に基づいて割合を決める方法
ワンルームマンションなど、面積で家事按分がしにくい物件を使用している場合は、この方法を使うといいでしょう。
例えば、1日24時間のうち8時間を仕事に充てているのであれば、家賃の33%を計上することになります。
いずれの方法を取るにしても、税務署から聞かれた場合に、きちんと根拠が説明できるようにしておきましょう。
ちなみに、賃貸物件の契約者が事業を行っている本人ではなく、家族である場合(契約者は夫で、事業として使用しているのが妻などの場合)でも経費として計上することができます。
テナントなどの賃貸事務所は全額経費
テナントなど、賃貸事務所を借りている場合は、基本的に全額経費として認められます。
ただし一部例外があります。
例えば、借りている事務所のオーナーが親や配偶者、親族の場合は、その者と生計が同じなのかそうでないのかがポイントになります。
生計を同一にしている場合は、家賃を経費として計上できません。
生計が別の場合は経費として計上が可能になります。
バーチャルオフィスやコワーキングスペースの利用料は計上できる?
バーチャルオフィス(仮想の事務所)とは、会社に必要な事業用の住所のみを貸出するサービスです。
この利用料も、事務所が物理的な場ではないものの、事業用として利用する場合は経費として認められます。
同様に、電話の転送サービスや郵便局の受け取り、代行等の古いサービスも利用が可能です。
ただしこの場合は「地代家賃」ではなく、「支払手数料」や「外注費」として計上します。
「支払い手数料」は、事業の取引において発生する費用や手数料を処理する勘定科目です。
「外注費」は、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に使用する勘定科目です。
しかし、外注費として処理した場合は、外注先に支払った消費税を課税仕入取引として処理するため、少々ややこしくなります。
シンプルに処理するなら、支払い手数料として処理するほうがいいかもしれません。
コワーキングスペースのドロップインで事務スペースを1日だけ借りた場合も、事業用であれば経費として計上できます。
ただし、この場合1日だけの利用で賃貸借契約を結んでいるわけではないので、「地代家賃」ではなく、「雑費」や「会議費」として計上します。
社宅の家賃は経費になる?
社宅の家賃も経費として認められます。
賃貸物件を会社名義で契約し、従業員に住まわせた場合、経費の処理が可能です。
この場合の勘定科目は「地代家賃」ではなく、「福利厚生費」として計上します。
また社宅を福利厚生費にするためには以下のポイントが重要です。
・従業員から家賃の一部(賃貸料相当額の50%以上)を徴収する。
50%より少ない場合は、賃貸料相当額から徴収額を引いた残りの金額が課税対象となるので注意。
・家族従業員は対象外、第三者を従業員として雇用をした場合のみ、計上が可能。
参考)持ち家の場合は?
持ち家の住宅ローン支払い分も経費として認められます。
ただし持ち家の場合、持ち家の取得時期と事業開始時期によって処理が違います(開業後に取得した場合は「固定資産」として計上する必要がある)。
また、住宅ローン控除の対象外になるため注意が必要。
住宅ローン控除は、「居住を目的とした住居に対する優遇措置」です。
そのため、半分以上のスペースを事業用として使用してしまうと、住宅ローン控除の対象外となってしまいます。
また、青色申告の場合は、事業用スペースが事務所面積の半分以上でない場合も、事業用扱いとして処理ができますが、明確に事業用のスペースとして分けられていないといけません。
一方、白色申告の場合は主たる部分が業務上必要で、かつ必要部分を明確にできる場合に経費として計上可能など、青色と白色で扱いが違うので気をつけましょう。
家賃を経費にする際の注意事項
経費に計上する際の根拠となる資料として、賃貸契約を証明する賃貸借契約書を保管しておく必要があります。
できれば確定申告用の資料としてコピーを取り、すぐに取り出せるところに保管しておくといいでしょう。
敷金・礼金・保証金は経費にできる?
敷金や保証金等、退去後に返金される費用は、経費としては計上できません。
これらの支出を帳簿につける際は、「敷金」等の勘定科目で記帳し、「資産」として計上します。
ただし、時間の経過とともに償却される敷金については経費として計上が可能です。
入居時に支払った敷金から返金された金額を引き、算出された金額を「修繕費」か「雑損失」として計上すればいいでしょう。
礼金は返却されないため、「地代家賃」として経費の計上が可能ですが、20万円未満と20万円以上とで経理処理が異なるため注意が必要です。
20万円未満の場合は「地代家賃」または「支払手数料」を使い、全額を費用として処理します。
20万円以上の礼金は「繰延資産」となるので「長期前払い費用」として計上し、決算時に「地代家賃」か「支払手数料」にて償却します。
駐車場代やトランクルームも経費にできる
事業用に使用している車を停める駐車場代は経費扱いとなります。
勘定科目は事業の状況によって次の3つのいずれかを使うことになります。
・車両費
・駐車場代
・賃借料
また、トランクルームなどの賃料も経費として計上できます。
ただし、駐車場をプライベートでも使う場合や、トランクルームに個人の荷物を入れている場合は、先述の家事按分をする必要が出てきます。
【事業用と住居の賃料を経費にできる?】まとめ
以上、家賃を経費にする場合の帳簿や確定申告での計上の仕方について解説しました。
事務所の家賃や賃貸契約の際に発生する費用、駐車場代やバーチャルオフィスの住所に至るまで、いずれも「事業で使用しているという実態があり、合理的に証明が可能」ならば経費として計上が可能だということを覚えておくといいでしょう。
帳簿の記載に関する勘定科目の解説について、さらに詳しく調べたい場合は税理士事務所などで経費などの解説をしているサイトや書籍もたくさんありますので、そちらも参考にしていただくといいでしょう。
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